東綿花胡同

　南鑼鼓巷と比べて人影はまばらですが、少なからずのサプライズが秘められています。これは、東城区東棉花胡同です。今日、この宝物だらけの胡同について、特別の魅力をご紹介します。

　南鑼鼓巷に沿って北方向へ歩いていくと、東側にある第三番目の胡同は東棉花胡同であります。古代ここでは鉄を打ったり、綿を売ったりする商売を営んでいましたから、東綿花胡同の名は綿花市場があったことに由来しています。1979年に西城区綿花胡同と区分けするため、東綿花胡同と改称されました。

　南鑼鼓巷から路地に入って、まず目に入ったのは有名な中央戯劇学院の実験劇場であります。ここは芸能人のゆりかごであり、巩俐、章子怡、刘燁、段奕宏、刘昊然などの数多くの演技派俳優と初々しいイケメン俳優たちはここから芸能界入りを果たしてきました。

　この胡同をそぞろ歩きすると、美男美女が行き来し、いつの間にか憧れのアイドルに会えるかもしれません。 そして、最も特筆に値するのは、東綿花胡同15号の中でこの民国初期のレンガ彫刻のアーチであります。「北京で最も美しいレンガ造りの建築物」とネットユーザーから称賛の声から寄せられました。

　このレンガ彫刻のアーチは高さ4メートル、幅2メートル、アーチの上に刻まれたレンガ彫刻が繁雑で華麗であります。遠くから華やかな白黒の絵巻のように見えますが、近寄ってよく見ると、花卉、猛獣、歳寒三友である松・梅・竹、多宝閣、暗八仙をぼんやりと目にします。

　見上げてみると、アーチの上には「出将入相」という大きな字が刻まれていています。そこから、重ねた歳月の風合いを感じられますが、屋敷の持ち主の身分の尊さが窺い知れます。

　このレンガ彫刻のアーチについて、妙な所は、その巧さだけではなく、中国と西洋の折衷にもあります。

　このアーチはもともと清朝末期の広州将軍である鳳山の故宅の一部であったが、彼はかつてヨーロッパを訪問し、ドイツ・オーストリア新鋭陸軍を視察したことがあったので、西洋文化に対して興味があり、彼の旧宅にこのような西洋風アーチを建てました。その後、鳳山将軍家系は没落し、結局残したのはこのレンガ彫刻のアーチだけです。

　雕欄玉砌がまだ残り、ただ朱顔のみが変わります。アーチの下で静かに眺め、歴史と触れ合い、どうしても感慨が湧いてきます。煙のように消え去った昔の物語や歌のように浮き沈みに満ちた歳月はこの並々ならぬアーチの裏にひっそりと秘められています。

　胡同の両側には精緻を極めた赤門がたくさんあります。この中にはそれぞれ特色のある四合院があります。しかし、門が閉まっているので、外から庭の中にある別天地を想像するしかありません。ゆえに、東綿花胡同にもそれなりの神秘を加えました。

　胡同の真ん中に位置する35番にいると、道端に「蓬蒿劇場」の看板が掲げられているのを見ることができます。「天を仰ぎ大笑して門を出でて去る、我が輩あに是れ蓬蒿の人ならんや」と言われるように、「蓬蒿劇場」の名を聞くだけで壮快な気分になります。これは中国初の民間投資で設立された非営利性独立劇場であり、民国四合院を改造したもので、図書館、展示ホール、喫茶店が一体となっています。 定番の公演以外にも、演劇関係のサロンが定期的に開催されています。演劇マニアのなら、きっとここで心底から愛するものを見つけられます。

　また、東綿花胡同には飲食店が多くあります。霧MIST日本料理、九焼ヤキヤ、江湖バーといった店は、ユニークで快適な環境が提供し、親戚友人の集まりにも打って付けの場所であります。

　もしあなたが物静かさを好むならば、暇な午後を選んで、東綿花胡同をのんびりと散策して、昔ながらの味わいを満喫できます。歴史の深みも映画スターの夢も、そして庶民の平凡生活もこの魅力的な胡同の中に潜められています。